鞆の春の風物詩ともなっている観光鯛網。
しかし近年はめっきり人気がなくなり、昨年は観光協会(現 観光コンベンション協会)が主催者となって初めて観客数が1万人を割り込んだのは新聞などでも報道され、今後の観光鯛網のあり方を問う状況になっていました。
今夜は今年の観光鯛網はどう変わったのか?今後、観光鯛網が生き残る為には何が必要なのか?を考えてみたいと思います。
今夜はかなり辛口の内容です(苦笑)
【今年の観光鯛網のパンフレット】
で、気になる今年の観光鯛網はどう変わったのか?
、、、???
まず大きな変化が従来は4月末の連休から5月末(近年が5月後半)まで行われていた会期が大幅に短縮されたことです。
会期を短期集中型にし、1日当りの観客数を多くする為とのことですが、どうみても不採算による事業規模の縮小としかみてとれません。
パンフレット右下の黄色の網引き体験、網船高台からの見学(抽選)は昨年も行っていたので、新しい企画ではありません。
また今年は案内のパンフレットが見開きの豪華なものになりました。
【今年の観光鯛網のパンフレット】
このパンフレット、福山市内のセブンイレブンに置いていたのでもらってきたのですが、観光鯛網を観覧する方には有難いことかもしれませんが、ではこのパンフレットでいったい何人の集客力の改善が期待できるのか?
具体的に今年の観光鯛網で変わったこと、、、それはこのパンフレットが見開きになったこと、、、以外には見い出せませんでした。
本来、観光のプロであるはずの観光コンベンション協会が打った手は時代の流れに全く対応できていないとしか言えないお粗末な「規模の縮小&内容の現状維持」でした。
では観光鯛網で何が問題なのか?
先ず筆頭に挙げられるのが鞆の人ならばほとんどの人が口にする「やらせ」「なんちゃって」の擬似漁です。
【真鯛以外の魚が入らない魔法?の網】
こんな「やらせ」をしていて現代の「本物志向」に対応できるはずがないのです。
でも、近年の鞆沖では真鯛が取れないから本当の漁をしては開催できないのでは?、、、と大半の方が言うと思います。
実は瀬戸内海における真鯛の漁獲高は大幅に改善しており、1970 年の2,033 トンから2010 年には4,410 トンと2 倍以上増加しています。
この要因としては瀬戸内海の海水が以前よりもきれいになったことにより、濁った水よりも、澄んだ海水を好む真鯛の育成に適していることが大きな要因とも言われています。
また近年ではスーパーに行けば瀬戸内産の天然真鯛よりも養殖真鯛の方が値段が高いという逆転現象さえ起きています。
これは漁獲高の改善による卸値の低下と同時に、養殖技術の発達で天然真鯛以上に養殖真鯛の方が脂が乗って味が良いからなのです。
もしも本当の鯛網を行うとするならば、ある一定の海域に「鯛網専用の禁猟区」を設けて放流事業などと併せて天然資源の確保を行うことも、今後の選択案として考えるべきだと思います。
【戦前の観光鯛網の写真ハガキ 大型の真鯛も入っている】
多少、漁獲が減ったように見えたとしても、「本当の鯛網」を行った方が、より臨場感があり、「本物志向」になり、そして瀬戸内特有の多種多様な魚の水揚げがあり、観覧する人が楽しめるのではないでしょうか?
でも「本当の鯛網」だけではまだ足らないと私は思っています。
では何が必要なのか?
観光鯛網で一番欠けていること、それはリピーターを増やす努力です。
観光鯛網を一度は行ったことがあるが、毎年行くという人はほとんどいないと思います。
「なぜ?」かは一度観覧した方ならばよく分かると思います。
ではどうすればリピーターを確保できるか?
それには「本物志向」と同時に「観光鯛網にしかないもの」を作り上げることだと思います。
その一番の近道は、「獲れたての海の幸をその場で料理して食べさす」ことだと思います。
福山市内などには「活き造り」はありますが、獲れたての魚をその場で食べさせるというようなサービスは一部の小規模の遊漁船しか行っていません。
一つの案としては、かつて行っていた鯛網見学の後に阿伏兎観音沖へのクルージングに、獲れたての魚の昼食などをコラボさせることです。
【観光鯛網の遊覧船の船内 見学が終わるとすることがない】
獲れたての魚はなにも真鯛だけでなくてもいいはずです。
なぜならば真鯛よりも美味しい海の幸は他にもたくさんあるからです。
【もしもこんな獲れたての海の幸がその場で振舞われたら?】
写真は私が鞆の海で釣ったり、獲ったりした海の幸の料理ですが、お店で売っているどんな高級食材でも鮮度では絶対に負けませんし、なによりも美味しいものです。
鯛網で獲れた魚と、事前に朝、漁師たちが獲った海の幸で料理を船上で振舞う。
こんな至福な時を過ごせるならば、かなり高くても人は集りますし、なによりも料理目当てでリピーターも必ずたくさん付くはずです。
一日一回のみの開催で、実現すればおそらく大人¥7,000~¥8,000の予約制でもかなりの集客があると思います。
こうすれば、短期集中型の意味もありますし、なによりビールなどの酒類もかなりの注文になると思いますので、サプライズの売上なども十分確保できると思います。
そして鯛網だけなく、鞆の魚のブランド化にも大きく寄与するのではないでしょうか。
とにかく現代の観光スタイルは地元の人々が食べている美味しいものが食べたいという「本物志向」に大きくシフトしてきています。
そのことを踏まえて今後の観光鯛網を考えていかなければ鯛網に未来はないと言わざる得ないと思います。
かつて大正後期に、鞆出身者の実業家である森下博氏の資金援助で始まった観光鯛網。
観光鯛網が始まった頃のように、「鞆に鯛網あり!」と言わせる為には、柔軟な発想で鞆の鯛網にしかないものを顧客に提供をしなければないないのではないでしょうか。