先日、新聞に尾道市が来年度から国の歴史的風致維持向上計画事業(歴史まちづくり法)の適用を受け、さまざまな事業に取り組むことがほぼ決まったようだとの記事が出ていた。
この認定により尾道市は今後10年間で30件の事業に取り組み、歴史的風致を活かした観光都市としての磨きをさらにかける取り組みのスタートを切った。
(観光で「飯が喰えるまち 尾道」 福山市とは比較にならない観光先進都市である。)
尾道は「仏教寺院」を中心とした歴史的資産と、「港町としての風情」、そして「坂の町の風景」を活かして観光化を推し進めてきた。
車社会では不便極まりない「坂道」を逆転の発想で「観光資源」にし、「歩く観光スタイル」を確立させたアイデアは鞆も見習うべきところである。
また観光スポットと市の中心部の商店街を観光客の周遊エリアとしているところなどは福山市内の商店街も見習うべき点は多い。
ソフト事業に於いても積極的で地元出身の映画監督の大林信彦氏をはじめたとした映画やテレビドラマの誘致を常に行い、「港まち尾道」の情報発信をし続けている。
一昨年のNHKの連続ドラマ「てっぱん」ではお好み焼きがクローズアップされ、尾道ラーメンに続く新たな尾道グルメとして週末にはお好み焼き屋に行列が出来る程の賑わいでもある。
今後、歴史まちづくり法を活用して、更なる魅力アップを図り観光を軸とした市の活性化に取り組むだろう。
尾道市が歴史まちづくり法の適用を受けて新たなまちづくりを進めることについて、尾道出身の元NHK解説委員で今月から鞆の西町に居を構えた歴史遺産専門家である毛利和雄氏は、「尾道は歴史遺産を活かしたまちづくりの大切さについては、いわば市民の合意ができている」という。
私は以前、尾道の会社に勤めていたし、嫁は尾道出身なのでこの毛利氏の言葉はとてもよく理解できる。
尾道市民は町を愛し、またその愛する町を資源として生計をも立てている。
尾道市民のシンボルは港であり坂であり、中世から栄えた仏教寺院などの歴史遺産であり、そしてその中で生活を営む住民を主人公とした歴史的風致なのだ。
そういう面では福山市は非常に中途半端だ。
バラ行政を推し進めるのはいいが、、、、その後に続く言葉が全く見えない。
尾道だけではなく、竹原市も同様の準備を進めているようで、バブル以前の商業ビル開発に頼るような時代遅れの事業にしか興味がなかった福山市は駅前再開発の失敗に呆然とするばかりで、今後さらにこれらの市と大きく差を付けられることになりそうだ。
(町並保存の先進市である竹原市の町並保存地区)
鞆では観光化は生活を脅かすとか、観光では飯が喰えないなどという言葉をよく耳にする。
しかし尾道では観光は市の基幹産業でもあり、膨大な雇用も創出している。
またみやげ物などの製造業も非常に盛んで、実は鞆で売られている観光客向けの土産の大半は「Made in 尾道」なのである。
つまり尾道は観光を軸にした産業の循環システムも構築されているのである。
こんな素晴らしい実例が目の前にあるのである。
(鞆の顔的存在の常夜灯界隈も電線がこの通り。歴史まちづくり法などを活用した電柱の地中化事業は、観光化はもとより生活面での改善も図れる。)
鞆は尾道や竹原に負けない程の歴史資産や歴史的風致を持ちながら、その町の資産をまだまだ十分に活かせていない。
それは「鞆は歴史遺産を活かしたまちづくりの大切さについては、いわば住民の合意ができていない」とも言えるかもしれない。
尾道市が今後取り組む事業を通じて、鞆も未来の方向性を本気で考える時が来ているのではかと思う今日この頃である。